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一流を知りなさい。オリジナリティを出しなさい。恋をしなさい。
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「そして西川さんは彼氏を作りなさい。」
20代半ばから後半、私は花屋に勤めていました。
私は体調を崩して術後に就職したのがこの花屋でした。病気になったことで、身も心もリフレッシュしたかったし、新しい何かに出会いたかった。今までやったことのないことを始めてみたかった。
その思いで見つけたのは、飼い猫と同じ名前だったという理由で新しい就職先を決めた花屋。
術後ということもあってか不明だけれど、ちょうど髪の毛がどんどん抜けている時期で、ウィッグ生活に入った頃でもありました。そのため、見えない不安で毎日毎日泣いている時でもありました。
花屋といってもブライダル専門だったので、街中にあるようなお花屋さんで見かける馴染みのある花は少なく
私たちが扱うのは華やかで美しくて可憐な花でした。高級で繊細なものばかりです。
会社に行くことそのものが私の癒しでしたし、悲しいことを忘れて楽し時間に没頭できる仕事でした。
会社の扉を開くたびにフワ〜っと香る幸せなバラの香り。季節によって旬の花たちがやってきます。スイートピー、ミモザ、チューリップ、すずらん、ライラック・・・などなど、うっとりするような甘い香りと、傷ひとつつけることが許されない美しい花たち。
夢中になって花の仕事を覚えました。
下処理からアレンジ、デザインから製作、納品、お客様との打ち合わせまで一連を通してできる仕事は今思い出しても楽しいものです。
その中でも特に思い出深いのが、「ボス」という上司でした。当時50代半ばくらいでしょうか・・
小柄でスマートはあるものの、貫禄があって良いものたくさん知っている男性でした。
よく私たちスタッフに「一流のものを知りなさい。オリジナリティを出しなさい。」そんな風に言って背中を見せてくれました。
ブライダルフラワーは、お客様にとって人生で一度の大事な日を飾る仕事です。
幸せを格上げする、盛り上げるお花を作る、新郎新婦に寄り添うお花を作る、ご両親にとっても特別な祝福の日、何もかもがスペシャルで幸せな日なのです。
そういうことを仕事にするということは、自分も良いものを知っていないとできない。
たくさん出かけて良いものをみる。一流を知る。これはすごく大切なことだよと。
それからオリジナリティを出しなさいと。言われたことをただこなすような仕事をするのではなく、自分の個性も出していくものだと。自分にできることは何かを常に考えなさい。
多くを語らなかったボスですが、今の年齢になってみるととても大切なことを教えてくれていたと感謝しかありません。
特に、ボスはホテルやレストランに行くようにと言っていました。
一流のホテルのロビーには大きく豊かな花が飾られているからですし、レストランでは素人では思いつかない食材の扱い方をしますしシェフのアイディアからインスピレーションをもらえるからでしょう。
帝国ホテル、リッツカールトン大阪、フォーシーズンズ、椿山荘、リッツパリやフォーシーズンズパリ・・・よくこれらのホテルは名前が上がっていて
〇〇ホテルは花をこうやって飾っていた、〇〇ホテルのあの花は素晴らしかった、など話していました。
私はこの時の影響を強く受けて今に至っていると思います。
ホテルのロビーに行ってはよくお花を見ましたし、お金がなくてお茶できない時はロビーで人間観察をしていましたし(笑)、どんな空気感なのか、豊かさとな何なのか、美しさとは、オリジナリティとは、、色々考える時間がありました。
その時に考えて行動したことが、私の基盤となっていると言えます。
撮影の仕事にしても同じです。
自分が知っている以上のクオリティ、サービスを提供することはできないと感じます。
できない、は言い過ぎかもしれませんがやはり良いものを知っていないと提供できないものは多いです。
それは私が実際にサービスを提供する側だから感じることかもしれません。
どんなことでもまずは体験してみる、経験してみるという習慣は、ボスに教わったことです。
先日は彼のリクエストでリッツカールトン大阪へ行ってきました。(初めてです!)
ホテルの中のホテル、ボスがよく言っていた場所へ。
泊まったことでボスを思い出したので今回は記事を書いてみました。
それで実際に泊まってみて思うのは、私にとってまだ早いです。
年齢的に早いのではなく、一流ホテルの愉しみ方とでも言いますか、そういう「愉しみ方」ができるようになるにはまだまだ時間がかかりそうです。
知性とユーモアを持ってスタッフの方とコミュニケーションを楽しむできることが理想ですのでね。
ただ泊まるのことはできますが、そういう大人ならではの「愉しみ方」ができるには私にはまだ早いということです。
重厚なインテリアで、落ち着いた照明。
どこもかしこも良い香りで素晴らしかったです。
クラブラウンジに宿泊しました。
軽食やドリンクはこちらでいただきました。
それでね、ボスに言われた最も印象に残っている言葉
「西川さんは彼氏を作りなさい。」
病み上がりで、必死な顔をしていたのでしょうね・・・。
幸せな花屋の仕事は、幸せな顔が似合うよということ。
もっと力を抜いて、恋をして、彼氏を作って、毎日を幸せに過ごしてほしい。
親心のようなものだったと思います。
クリエイティブの素晴らしさを教えてくれたこの時期、
幸せは作品に宿る。
私たちはいつもしあわせでいて、一流を知り、恋をする。
その基本が良い作品と繋がっている気がします。
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